ゲームの「高難易度コンテンツ」について思うこと
黒杜は、とあるスマホゲームの運営チームの一員として働いています(画像は『ワーフリ』だけど『ワーフリ』じゃないよ)。自分はまだまだクソ雑魚ナメクジなので設計の深い部分までは関われていないのですが、日々の施策を考える上で難しいもののひとつにバランス調整があります。
次のイベントはどんなキャラクターを出すのか。どういう能力にするのか。その能力が活きるボスはどんなボスか。どんなパーティでのクリアを想定しているか。悩み倒して上で決められていきます。苦心する姿をすぐ横で見てきたので、自身が経験していなくても苦労のほどは痛いほどわかっているつもりです。
特に各ゲームの肝となる「高難易度コンテンツ」は非常に調整が難しい。ベリーハード、チャレンジクエスト、闘技場、顕現……ゲームの数だけ高難易度コンテンツも存在しますが、これらのコンテンツはどうあるべきなんだろう、と考えることが多く、今回記事にした次第です。
とくにまとめ上げてないまま書きはじめているので、散文を前提に呼んでいただければと思います。
高難易度とは?
さて一口に高難易度と言っても、世の中にはどんな高難易度コンテンツがあるのでしょうか。高難易度というだけあるので、普通のコンテンツよりも難しいことは確かです。では何を持って難しいとするか。 列挙してみます。
- 敵が強い(『モンハン』など。高HP、高攻撃力、高防御力)
- ギミックが難解(『ゼルダ』など。謎解き系全般)
- 操作精度の要求レベルが高い(『Celeste』など。ほとんどのアクション)
- 試行回数が多い(『ポケモン』の捕獲など)
- とにかく手数が多い(タワーディフェンスなど)
とりあえずこれだけで良いでしょう。これらに共通するものと言えば。面倒くさいといったメンタル的なものなどあると思いますが、黒杜は通常コンテンツに比べ「クリアにより多くの時間を消費する」コンテンツが高難易度コンテンツである認識です。
例えば冒頭の画像に出しました、『ワールドフリッパー』のルインゴーレム超級。いわゆるボスを倒すコンテンツですが、攻撃力が高くHPとも多い。故に倒すのに時間がかかるようになっています。
ユーザーに難しいと思わせるにはどうすればいいか。クリアするのに時間がかかったのなら、ユーザーは「歯ごたえがあった」と感じてくれるはず。『ムジュラの仮面』のロックビルは仕掛けに舌を巻きましたし、『アナザーエデン』の開眼ガリユは敵の行動パターンを把握するのに苦労しました。
時間のかかるコンテンツに対して、ユーザー側も思案を重ねて様々な対策を打ち出してきます。その中でも、バランス崩壊に繋がりかねない(と感じている)のがいわゆるワンパンです。
ワンパンが破壊するのはボスだけじゃない
ワンパン編成って言葉はスマホゲームでよくあると思います。文字通りボスを初手で(あるいは開始数秒で)倒すことができるパーティ編成。『パズドラ』や『モンスト』が走りかはわかりませんが、そこからどんどん広がっていったと思います。
ワンパンできると何が嬉しいか。先程も述べたように黒杜の高難易度コンテンツの認識は「クリアにより多くの時間を消費する」コンテンツなので、ワンパンだと非常に楽です。クエストがすぐに終わるので、いくらでも周回できます。周回がたくさんできる=強い武器やキャラクターが手に入る、に直結します(タイトルによりますが概ね同じでしょう)。
黒杜は正直、この流れが好きではありません。どれだけボスの攻撃を工夫しても、ワンパンされたら何も意味がない。ユーザーの視界に入らない。ユーザーも周回にかかるコストが低いので、ゲームをただの作業としか感じない。最悪の循環です。
これを解消するためにどうするか。キャラクターや武器のナーフをするのはあまりにも露骨なので、コンテンツ側で対処するしかありません。特定のキャラを編成しないとダメだったり、ある属性以外の攻撃は吸収したり。つまりユーザーへの嫌がらせがどんどん増えるわけです。持ち物検査と皮肉られることも少なくありません。
ユーザーはこういった傾向を嫌がります。なぜ。苦労して作り上げたワンパン編成が無に帰すから。一度ワンパンを味わってしまうとそこから抜け出すのは難しいです。『Civilization』開発チームが「水はひび割れを見つける」という言葉を残したように、一度美味しいテクを見つけたらそれなしで遊ぶのは難しいものです。
例:『ワーフリ』の「ルインゴーレム超級」
前述したように『ワーフリ』では2020年3月現在、「ルインゴーレム超級」という高難易度コンテンツがあります。ただ、今はそれほど高難易度と謳われていません。瞬間的に大ダメージを叩き出せるワンパン編成が考案されたからです。「ワーフリ ルイン ワンパン」と検索窓を叩けばたくさんアイデアが出てきます。ユーザーの努力の賜物です。
ただ、これは運営側の意図した遊び方かどうか。こればっかりはCygamesの運営に詰め寄らない限りわかりませんが、少なくとも「ワンパン編成を考えて楽にクリアしてほしいなあ!」とは思っていないと信じます。高難易度を冠しているのであれば、マルチバトルで協力して苦心してクリアにこぎつけてほしい。そう考えているものと思いたいです。
果たして、本当にそうでしょうか。
該当クエストの主な報酬は強力な武器です。高難易度コンテンツに対して、正当な報酬が用意されていると思います。ただ、これがワンパン編成だと短時間で攻略できてしまうので、武器の入手が容易になってしまいます。強い武器を簡単に手に入れられたら運営としては困りもの。ではどうするか。
結論を言うと「必然的に多く周回しなければならないようにする」ことで解決しました。該当クエストではクリアで交換用アイテムを手に入れられますが、武器をひとつ交換するには体感で40~50回の周回が必要です。最大交換可能数が5個なので、それを5回。さらに武器の種類が3種類。すべて集めるには5~600回以上の周回が求められるかと思います(ブレはあると思いますが)。
何が言いたいかって、運営としてはワンパン編成上等で、ワンパン前提の作り方をしてるんじゃないか、ってところですね。
これで苦しくなるのは、ワンパン編成を揃えられないユーザー。黒杜もそうです。1度の周回に黒杜はだいたい8~9分ほどかかっているので、武器をひとつ交換するだけでもかなりのリソースを割かなければなりません。ワンパン編成でなければマルチを断られる、ということもあるかもしれません。弱肉強食の世界です。
これは『ワーフリ』に限った話ではありませんが、周回数を多くするコンテンツはフラストレーションを溜めるだけです。楽しんでいるはずのゲームでなぜストレスを溜めなければならないのか。そう気づいたとき、ユーザーは離れていきます。
……なに、オート周回すればいい? 確かに。そのマインドは正しいです。プレイが億劫ならオート周回を設定してしまえばいい。解決。ただ、ひたすらオート周回をするだけの状態をゲームと呼ぶべきなのか、甚だ疑問ではあります。
おっとつい本音が。
強引にまとめ
収拾がつかず3000文字を超えそうなので、このあたりでまとめ。
高難易度コンテンツの種類は数あれど、思うのは、それがエンドコンテンツであれば大して問題ないという点です。エンドコンテンツは極めたユーザーがたどり着く場所、というのは他の記事でも書きました。高難易度コンテンツで手に入れられるものを今後の標準装備にするべきではない、と言いたいです。
それを持ち物検査に組み込んでしまうと、入手が必須になるため、高難易度コンテンツは必ず最適化されます。そうなるともう、高難易度コンテンツとしての意義がありません。コイツ何回高難易度コンテンツって言うねんと思われるかもしれませんが、この部分はゲームの崩壊に繋がりかねないと感じています。
正直『ワーフリ』も遠い未来の話ではないです。ウリである高難易度コンテンツが当然のように最適化されているのが現状。次に運営がとる方針は……。
うむ、3000字を超えてしまった。それほど警鐘を鳴らしたい思いに溢れていることをわかっていただければ、良しとします。ではまた。
ワーフリはメインコンテンツがマルチバトルだから、一人で遊びたい人には向いてない。高難易度クエストもギミック云々ではなくただボスのHPと攻撃力が高いぐらい。基地のようなサブコンテンツもないので、やることがないって状況になりがちな気がする。というかなってる。
— シカダ (@cicada_sweet) 2020年3月3日
追記(2020/3/6)
件の『ワールドフリッパー』に関して、ゲーム内のお知らせでプチお詫びがありました。3つ目のパラグラフが今回の記事で言及している部分ですね。
運営としては単調な周回をしてほしくない。そりゃそうだ。なのでその周回途中で武器がドロップするようにする。よくある救済措置だと思います。今まではあれですね。剥ぎ取りのできない『モンハン』みたいなものですね。ちょっと違うか。
危惧しているのは、最終的に行き着く報酬が武器なので、モチベーターになりうるのだろうかってところですかね。
強い武器が手に入るってことは、よりワンパンしやすくなる(曲解)ということなので。自分の好きなキャラでキャッキャウフフするためにも武器は強いものにしなければ! というところに落ち着くのかなあ。
好きなキャラで俺TUEEEしたいのならばこれで良いのだと思います。あとはただひたすらに、シングルプレイのエンドコンテンツを充実させてほしいと考えるばかりです。フェイの問題みたいなコンテンツ、作れそうなもんだがなあ。