世の中の「作業ゲー」を根絶させる方程式

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先日、ちょっとした思いつきで数年ぶりに『ペーパーマリオRPG』をプレイしました。リッチリッチエクスプレス以降の展開を完全に忘れていた。

気に入っているゲームなので、当時を思い出しながら楽しんで遊んでいたのですが、ちょっと引っかかる箇所が。いわゆる「作業ゲー」と感じた瞬間がありました。今回は『ペーパーマリオRPG』の例を交えてゲームを「作業」だと感じる瞬間を考えます。

同作のネタバレをやや含むのでご注意。

作業ゲーをどう定義するか

まずは認識合わせです。作業ゲーとはズバリどんなゲームか?

下調べなしフラットな持論を書くと、同じことを延々と繰り返す必要があるゲームという認識です。ソシャゲの周回などはこれに当たるでしょう。個人的には『モンハン』の素材集めも作業ですが、ここは解釈が別れるところなので一旦飛ばします。

作業ゲーを定義するには、まず「作業」という言葉から詰めなければなりません。デジタル大辞泉にはこう記されています。

[名](スル)仕事。また、仕事をすること。特に、一定の目的と計画のもとに、身体または知能を使ってする仕事。「修復作業にとりかかる」「徹夜で作業する」「作業能率」「農作業」

これでいきましょう。重要な部分を太文字にしました。

仕事とは。 デジタル大辞泉曰く「何かを作り出す、または、成し遂げるための行動」。仕事の際に目的と計画が伴えば作業と言えます。まとめると「ある目的のために、計画を伴って実施される行動」が作業です。

んなコトわかってるぜおい、って感じですが、自分が大事だと思うのは「目的」が存在するということ。つまり、行動の結果どうなるかが予めわかっているということです。更に掘り下げれば、どうなるかがわかっている前提の行動は、紛れもなく作業です。

例:ペーパーマリオRPG

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前述の『ペーパーマリオRPG』を例に出します。あるステージでボスを追い詰めるために、マリオが村とダンジョンを往来するタイミングがあります。初回ボス撃破~ステージクリアまでの流れを超簡単にまとめました。

・ダンジョン最深部でボスを倒す
・しかし、ボスに名前と姿を取られてしまう
・村の目の前でボスに遭遇。倒せないので逃げる
・村で調査をして、ボスの弱点がダンジョンにあると判明
・村を出てすぐ再度ボスに遭遇。倒せないので逃げる(2回目
・ダンジョンで弱点を知る
村の目の前で再度ボスに遭遇。弱点を知られたボスがダンジョンへ逃走
ダンジョン最深部でボスと遭遇。倒すとステージクリア

クソポイント難点は太文字にしました。ボスを再度撃破するためだけに、村とダンジョンを行ったり来たりします。

道中はそれなりに距離があり、敵はそこそこ強く、ワープポイントはありません。初回は多少謎解きがありますが、後半の往復時はもちろん解決済みなので謎解きもクソもありません。このルートが正しい、ここを通ればダンジョンの最深部につながる、とわかっているわけです。

どうなるかがわかっている前提の行動なので、作業ゲーだと断言できます。プレイしながら「またダンジョンの最深部まで行かないといけないのか……」と毒づいていました。

同作にはいくつか作業ゲーポイントがあります。

・「好きだ!」というテキストを手動で100回表示させないといけない
・空中ステージへ向かう際に飛行船に乗り降りするシーンがカットできない

などなど。良い点もたくさんあるだけに、作業を強いられる箇所が多々あるのはすごく残念だなあ、という感想を持ちました。

作業ゲーはなぜ発生する?

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こういった作業はなぜ発生するのか? 開発者視点で考えます。

ゲームを作っている身としては、簡単にステージクリアされたくないと思います。なぜ。当ブログでも口うるさく言っていますが、ゲームの大原則は「課題・挑戦・報酬」のサイクルです。 

認識合わせをしておくと、これはおつかいイベントに限りません。たとえば『スーパーマリオブラザーズ』の1-1にはこういったサイクルがあります。

課題:強制的に右方向へ進ませられる

挑戦:敵やギミックをジャンプアクションなどで避ける

報酬:クリア演出、次のステージ解放

課題が簡単にクリアできては歯ごたえがないので、開発者は難しい課題を与えようとします。画面が強制的にスクロールしたり、倒せない敵が出てきたり、水中ステージが登場したり、バリエーションは様々です。

ここでひとつ定義します。シカダは、ゲームにおける課題は「難易度×時間×単純さ×必須実行回数」が方程式として存在し、これの値が大きくなればなるほど冗長でつまらない、いわゆる作業ゲーになると考えます。これを作業方程式とでも呼びましょう。

たとえば『モンハン』。卵運搬は恐竜の巣から卵を持って帰るだけの単純なクエストですが、その分卵を運ぶのに時間がかかります。強力な大型モンスターの討伐は、難易度が高く、強いがゆえに時間もかかります。モンスターの行動はランダムと言えますが、どこで休むかなどは慣れてきたらすぐわかります。

どちらがより作業であるかという断言はしません。卵運搬のスリルを楽しむ人がいれば、運ぶだけなのはつまらないという人もいるでしょう。

作業ゲーが発生する理由は、作業方程式のバランスが取れていないことに尽きると思います。やったら難しくて、時間もかかるくせに、そのくせやることはひたすら同じゲームなんて考えたくないですね。

作業ゲーをなくすためには

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どうすればゲームから作業感を消すことができるのか。 先ほど提示した定義に則るなら、作業方程式の値をできるだけ低下させれば、作業感は少なくなるかもしれません。

  • 難易度は易しいけどそこそこ時間がかかる、ただし1回だけクリアすればよいエスト(難易度と必須実行回数の低下)
  • めちゃくちゃ強くて、行動も複雑だけど、体力は少ないので慣れれば早めに倒せるボスモンスター(時間の低下)
  • 簡単だけど、毎回クイズの内容が変わるイベント(単純さの低下)

など。考えてみると、作業感をなくすには「ユーザーに考える時間を与えること」が大事なのかなと思います。

ゲームで新規イベントがあったとします。初見で遊べばイベントの内容は予想がつかないので、作業感は少ないでしょう。しかし攻略サイトやネタバレを見てから遊ぶ場合は、結果や最効率の遊び方がわかってしまっているので、作業感が強くなります。

SNSの普及が進んで、ゲームの攻略情報はより早くネット上に出回るようになりました。効率を求める人からすれば有り難いことかもしれませんが、同時にゲームの作業感を強くしてしまっていることに他なりません。

作業ゲーをなくすためには作業方程式の値を低下させることも大事ですが、ユーザーがどう遊ぶかについても熟考する必要があるでしょう。

まとめ

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シカダは作業ゲーが苦手です。作業をするためにゲームをしているわけではなく、楽しむために遊んでいるわけです。作業感が強いゲームがやはり好きになれません。どうしても作業が発生するなら、スキップチケットなどで工夫するしかないでしょう。

作業ゲーがなくなるとは思いません。ならどうすればいいか。持論ですが、ユーザーの選択肢を増やすことが大事だと思います。

自分の裁量でゲームを進められるなら、不要な作業にぶつかることはそうそうありません。『ブレスオブザワイルド』などは最たる例でしょう。そういったゲームが今後増えていくことを期待したいです。