箱庭スタジオ

ゲームを中心にサブカルコンテンツの雑記・レビュー・コラムを書いています。

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終末的乙女ワンダーランド:世界の終わり


 あれは一〇八年と三ヶ月、未来のことだった。


     ▽

 

「透子ちゃんって、ずうっと先の未来から来たんだよね」
 しゃがれ声が聞こえないと思ったら、音楽プレーヤーからイヤホンが抜けていた。うつ伏せにしていた透子は顔を上げる。前の席に座る高岡晴香のパーマがかった茶髪が春の風に揺られていた。
「ずうっと先の」
「ずうっと先の未来。未来でもそうやって音楽聴いてたの?」
「そうかもね。あと、できれば邪魔しないでほしいな。ようやくミッシェルの音に沈んだところだったのに、すっかり引き揚げられちゃった」
「ミッシェル?」
「あんたミッシェル知らないの?」
 透子はイヤホンを差し出した。何も言わずに晴香は耳にはめる。しばらく難しそうな顔で聴き入っている様子だったが、やがて納得した様子になって、笑顔でイヤホンを透子に返した。
「どうだった?」
「よくわかんないけど、喉が渇いてそうだなって」
 晴香らしいといえば晴香らしかった。
「須田はミッシェル知ってるっけ」
「ミッシェル?」
 隣の須田幹也は人の話を聞かない。教室には透子たち三人しかいなくて、隣で何を話しているかくらいは聞こえているだろうに、それでも須田幹也は聴覚をシャットアウトする。そのくせ呼びかけには応じる。受信はしないが応答はする、壊れたスマートスピーカーのような男子生徒だった。
「ミッシェルって、どのミッシェルさ」
「ロックバンドに決まってんじゃん。それ以外のミッシェルは知らない」
「そう? ビートルズかもしれない」
 同じように幹也はイヤホンをはめる。五秒くらいして小さく何度か首肯して、すぐにイヤホンを返した。
「知ってる?」
「ちょうどギターソロだったから、なんとも」
「ずっとギターソロだっての、やっぱ知らないのね」
「知らないさ。たしかだいぶ前に解散して、少し前にメンバーの一人がいなくなってしまったんだろう。告別式は親族と友人だけでやったんだっけ」
「知ってんじゃん」
「知ってるのはそれだけだよ」
 幹也は席を立って、窓のサッシに腰掛けた。
「曲をなんとなく聞いたことがあるだけで、顔を少し見たことがあるだけで、そいつを知っているだなんて語るのは、どうにもおこがましくないか。牧野もいやでしょ、鼻歌を聞かれただけで『ああこいつは阿呆だな』なんて思われるのは。俺はいやだね」
「そうかな。そうかもしれない」
「同じだよ。だから俺はまだミッシェルを知らない」


 風が鳴る。三人同時に見下ろした窓の向こうは春模様だった。長く、校門まで続くスロープには桜の植え込みがあって、まだ葉桜には程遠い。透子がピンクに色づく花びらをじっと睨んでいると、晴香が視界に割り込んできた。
「ね、未来にも桜はあったの?」
「あったよ。でも、もう少し白かった。なんでかな」
 うっすらと残る風景をなぞる。もう夢にも出てこなくなった記憶の断片は、透子が住んでいたマンションのものだ。透子以外誰もいないマンションのロータリーには力強い桜の樹があった。この三人で手をつなぎ合ってようやく一周できるかというほど幹は太く、根は盛り上がり、春になると満開の花びらを透子に捧げた。
 それがすべてだ。マンションがどこにあったのか、何という街だったのか、透子はほとんどのことを忘れてしまった。
「透子ちゃんって、ずうっと先の未来から来たんだよね」
 晴香がもう一度尋ねる。
「どうして透子ちゃんは、未来からやってきたの?」
「どうしてだろう」
 透子は笑った。
 笑ってうつ伏せになって、細めた横目で桜を見ていた。
「だあれもいないところで、錆びついた階段に一人で座ってて、ついウトウトしちゃって、気づいたらここにいた。どうやって過去に来たのか、誰がわたしをそうしたのか、わかることは何もない。ただ、わたしは知りたいと思ってた。どうして世のなかがこうなっちゃったのか」
「荒廃した未来、ね」
 幹也が口元だけ笑っているのは、顔を見なくてもわかった。
「ファンタジーの世界じゃ定番のイベントだけど、あと一〇〇年とちょっとで、この平和ボケした世界が荒れ果てるとは思えないな」
「なるよ。それに、荒廃ってもガレキだらけの街ってわけじゃない」
 思い出そうとするたび、ちょっとだけ頭が痛くなる。
「コンビニも、喫茶店も、ゲームセンターだって今とそれほど変わらない。ただそこから人がいなくなっただけ。かすかな生活感と小動物だけ残して、わたし以外の人間は誰もいなくなってしまった。少し怖かったけど、それ以上に知りたかった。どうして世界が、こんなふうになってしまったのか」
「そして、知りたくもなかった」
 幹也は窓を閉めた。のろのろしたチャイムが聞こえる。下校時間が迫っていた。
「だから未来からやってきた、透子は」
「さあ、そうかもね」
「えっ、どういうこと? 須田くんは透子ちゃんがどうして未来から来たか知ってるの? ね、教えて」
「その答えはミッシェルのみぞ知る」
「あー、またそうやってはぐらかすー」
 笑い合うそばで、透子は、イヤホンが無造作に放置されたままの、誰にも聞かれないまま流れ続けている音楽プレイヤーを眺めていた。ささやくほどの大きさで聞こえてくる音。誰が何を歌っているのか、どんなギターを鳴らしているのか、とても判別できるものではない。それでも透子はわかっていた。ひとたびイヤホンを耳に近づければ、どれだけ時が経っても色あせない力強さが、そこにはあるのだ。
 ああ、そうだ。
 きっとわたしは、そうなんだろう。
 アルバムの最後を流し終わったところで、プレイヤーはひっそりとバッテリー切れになった。透子はプレイヤーをバッグに仕舞い込んで、帰り支度をはじめた。赤い、赤い月は、まだどこにも昇っていないようだった。

「ちょこっと文芸福岡」に行ってきました

本日8月26日、イオンショッパーズ福岡店の6階会議室で開催された「ちょこっと文芸福岡」に行ってきました。

 

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ちょこっと文芸福岡は、「憩いの場からつなぐ」を目的とした文芸イベントです。

文芸同人誌の即売会を中心に、全国の学生文芸誌の展示会、来場者の参加型企画、1paper zine「折本」の展示会など、を併設することで、文芸を体感できる穏やかな空間づくりを目指しています。

ちょこっと文芸福岡実行委員会(会場パンフレットより引用)

 

会場の印象

文学フリマ福岡より、もう少し規模の小さな即売会といったところでしょうか。会場は小さいながらも和気あいあいとしていて、休憩スペースがある分、他の即売会よりも一息つきやすかった印象。買った本や折本を読むこともできるので、居座ろうと思えばいつまでもいられる感じでした。自分は他にも用事があったので長居はできませんでしたが、もう少し楽しみたかったなあという気持ちも少々。個人の観点から良かった・悪かった点を以下に記します。

 

良かった点

  • スペース前の通路がゆったりしていたので、行き交う人を避けたりとか、そういう心配をする必要がないのは良かったです。
  • 商業施設のなかにあるので、休憩がてらご飯とかに行きやすいのも◎。今回は参加側ではありませんが、イベント参加のときは周りにお店がないとあらかじめおにぎりやパンを買わなければならないので、それが少し億劫。それが発生しないのはとても良いことだと思います。
  • 来場者が参加できる企画は楽しかったし良いアイデアだと思いました。家族連れが多かった印象なので、もっとエリアを広げても良さそうです。

 

悪かった点

  • 事前に「ちょこっと文芸福岡」のことを知っていた人しか来ないんじゃないか、という印象はありました。もちろん商業施設なのでそうではない人も来ますが、会場に来るまでにイベントの宣伝をしている看板・チラシなどがなかったので、やはりそういうところは難しいのかなと。もちろん施設との兼ね合いもあると思いますが、もう少し「立ち寄れる」「外から見える」ことを意識した会場でも良さそうだなと思いました。
  • 当日企画の「コラージュ川柳」、とても面白かったのですが、なかにはコラージュに使用する素材をほぼ独り占めして没頭しているような方がいました。もちろん悪いことではないと思いますが、もう少し気軽に参加できるような設置でも良かったと思いました。壁向きに座って行うよりも、直感で作るものかと思うので、立ったままできるシステムだとより参加しやすそうだと感じました。

(※上記は個人の感想です、ご了承ください)

 

 

今回買った本たち

Butterfly Effect / ちぐさん(H3)

ラジオタワーにまつわる様々な図形 / 松下和生さん(黒部想太)

大人に近づく子供たち / 九十九九音さん(サークル しろいかみ)

花図鑑 はなのな / アンソロジー(こんぺき出版)

 

 

まとめ

本格的な文芸イベントではなく、本当に「ちょこっと」したイベントで、ふらっと立ち寄る感覚で参加できたため、立地、会場の構成などを「参加しやすい」という点に寄せていけるとより良くなりそうだと感じました。久しく文芸イベントに参加していませんでしたが、こういうものに参加するとやはり血が滾るというか、またやってみようという気にさせてくれるのでとても良いと思います。来年も楽しみにしています。

 

最後に一句。

 

 

お粗末さまでした。

ではまた。

 

スマホゲームは「縦画面」と「横画面」どっちが多いのか。調査で感じた2つの展望

最近のスマホゲーム、縦持ちが多くない?

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つい先日『アークザラッドR』の配信がはじまったとき、なんとなく思ったことがある。それは少し前に『世紀末デイズ』をはじめたり、よく遊んでいる『実況パワフルプロ野球』にも当てはまることだった。

 

最近のスマホゲーム、縦持ちが多くない?

 

もちろん縦ばっかりというわけじゃない。大人気の『Fate/Grand Order』は横持ち、配信以来遊び続けている『アナザーエデン』だって横持ちスタイルだ。『デレステ』をはじめとしたリズムゲームも基本的には横画面だろう。しかし長寿タイトルの中には『モンスターストライク』『パズルアンドドラゴンズ』のように縦画面のものが多いのも確かだ。

 

特に最近は『どうぶつの森 ポケットキャンプ』のような任天堂タイトルはほぼ縦画面で、話題の『アークザラッドR』も縦画面。一時期に比べて、なんだか縦画面で遊ぶゲームが増えた感覚がある。この感覚は自分の気のせいなのか、それとも現実に縦持ちゲームが増えてきているのか。ささっと調べてみたので、結果とともに今後の展開についてもぼんやり考えてみる。

 

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“親ガチャ”を繰り返す『One Hour One Life』、転職サービス『GLIT』はAIが仕事を探してくれる【今日のトピック】

“親ガチャ”を繰り返す『One Hour One Life』

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AppStore、GooglePlayで配信中の『One Hour One Life』は、現実世界の1分で1年が経過し、1時間しか生きることのできない民族を、あの手この手で生き延びさせて繁栄を目指していくゲームのはずだ。実はオンラインゲームなので、知り合いの赤ん坊として生きていくこともできる。操作は難し目だが慣れれば意外と面白い。いかに長生きできるかを競えばそれなりに盛り上がるだろう。

 

とはいえこの『One Hour One Life』、なんといっても親ガチャがひどい。鬼難易度のチュートリアルを終え、いざ赤ん坊として生まれると、親が突然育児放棄して逃げ出すことがあるのだ。産声を上げた身としてはたまったもんじゃない。こうなると基本的に餓死、親は獣に襲われて死亡と負の連鎖が巻き起こる。普通の親ならきちんと育児をしてくれるが、それでも1年や2年で育児を辞めてしまうこともある。闇が深すぎる親ガチャだが、まあ、馬鹿にできないところはあると思う。

 

価格は600円。ワンプレイに時間がかかるゲームではないため、友達と集まって暇だなーってときに遊ぶにはいいかもしれない。ただしチュートリアルがクソ難しいのでそれを踏まえた上で遊ぶと◎。

 

www.youtube.com

 

 

転職サービス『GLIT』はAIが仕事を探してくれる

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『GLIT』は求職者に合いそうな求人情報をAIが自動でレコメンドする、検索不要の全く新しい転職サービスです。レコメンドされる求人情報を左右にスワイプするだけで、隙間時間から手軽に転職活動を行うことができます。
2017年6月のiOS版のリリースよりスワイプされた求人情報は累計190,000件に達し、企業とのマッチング数は約1,000件に至ります。

 

GLIT』はAIが勝手に仕事を探してきてくれる転職サービス。ついにAIが仕事を……と感慨深くなるのはちょっと遅くて、サービス自体は2017年6月に開始。今回WEBも登場したとのことで更に利用者数が増えそうな感じ。

 

転職といえばリクナビやらなんやらで個人情報や職歴・自己PRを登録し、それにマッチングした仕事情報から応募して面接、時には自分で条件を指定して検索して仕事を探すといったシステムだったけど、『GLIT』が少し違う。プロフィール情報や自分が見た求人情報をもとに、最適な仕事をAIが選んで持ってきてくれる。部屋探しに置き換えれば、従来は賃貸サイトで部屋情報を探していたのが、『GLIT』だと不動産屋が代わりに探して見つけてくれるようなものだろう。労力がかからない分、働きながらスキマ時間に転職活動ができそうだ。

 

個人的な難点だが、WEB版はFacebookに登録していないと使用できない。iOS版を使用すれば問題ないのだけど、Andoroid使いの場合はFB垢がないと門前払い。Facebookを使用している人は転職に困ってそうな印象がない(とんでもない偏見)のだけど、どういう意図があるのだろう。「Facebookに登録していれば新規でプロフィール登録する必要はありません!」ってところに落ち着くのか。なんだかなあ。

 

自分も転職チャレンジを何度もしてきた人間だけど、まだ落ち着ける場所ってのは見つけられてない。元々ノーマッドなので各地を転々とするほうが性に合っている。今の上司が会社を立ち上げたら首根っこ掴まれて連れて行かれると思うので、少なくともそれまでは転職サービスのお世話になることはなさそう。興味がある人は利用してみるといいかもしれない。

 

ではまた。

 

前回のトピック

tsugamin.hatenablog.com

 

『アークザラッドR』事前DL開始、ゲーム感覚でタスク管理の「marchily」、Halo at 四畳半にインタビューできる!?【今日のトピック】

アークザラッドR』事前DL開始

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いよいよ明日23日にサービス開始が迫った『アークザラッドR』、本日よりアプリの事前DLが可能となっている。Twitter公式アカウントでは「負荷をなくすために今しばらくお待ちいただければ」とアナウンス。夜中は回線が混み合うことが予想されるので、明日の朝にでもこっそりDLしておけば問題なさそうだ。自分は夏季休暇を絶賛取得中なので存分に楽しむ所存である。

 

さて自分はもちろん『アークザラッド』シリーズが好きなのだけど、おそらく少数派である『Ⅲ』のファンである。所持していた数少ないプレステソフトなので愛着があるのと、単純にルッツとシェリルのコンビが好きだった。それだけに公式で取り扱われていない(『Ⅲ』自体が大崩壊から7年後くらいの設定のはずなので、おそらく関わりがない)ので、少し切ない気分になった。なおトッシュがいるので問題はない模様。関さんの「桜花雷爆斬!!」を心待ちにするだけである。

 

 

ゲーム感覚でタスク管理の「marchily」

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仕事見える、チームちかづく。なタスク管理ソフト「marchily」が正式リリースとなった。ゲームのトロフィーが開放されていくように、ミッションを達成するとバッジをGET! みんなでバッジを手に入れることでチームのランクもアップ! というふうにまるでゲームのギルドのようにレベルアップをはかることができる、チームビルディングに重きを置いたサービスのようだ。

 

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SlackやChatworkなどのチャットツールはどこの企業でも使われだしているものの、タスク管理自体はExcelなどで済ませているところは多いかもしれない。うちはWrikeを使っているけれど、元が海外製のため少しとっつきづらい印象。

 

反面「marchily」は犬のアバターを設定できたり、獲得したバッジでチームメンバーの個性を見られたりとかなり「見える化」が進んでいて好印象。30日間の無料トライアルができるので、まずは個人で試してみるのもありかもしれない。いろいろ言ってみたけど、まあ、なんだかんだツールがポップだと仕事も楽しくなりそうだよね、って話。

 

 

 

Halo at 四畳半にインタビューできる!?

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なんともまあ面白いことをやっている。ロックバンド「Halo at 四畳半」へインタビューができるバイトが募集開始されているようだ。バイト探しのバイトルと音楽メディア「Skream!」のコラボ企画ということで、9月4日まで応募を受け付けている。

www.baitoru.com

 

バイトはともかくHalo at 四畳半は飾りっ気がなく純粋にかっこいいギターロックバンドなのでぜひ聴いてほしい。バイトに応募したついでにタワレコで『innocentpia』を買ってきてほしい。そのまま調子に乗って10月17日に発売されるメジャーデビューアルバム『swanflight』を買ってほしい。あとついでに名前が似てそうで似てない「Mudy on the 昨晩」も聴いてほしい

 

youtu.be

 

ではまた。

 

 

前回のトピック

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