『トロとパズル～どこでもいっしょ～』を遊んで感じた“ゲーム性”の在るべき姿
優しい世界がそこにある。この頃は心労が酷く、まともに執筆やゲームに打ち込めない日々が続いていたのだけど、ふとApp Storeで『トロとパズル～どこでもいっしょ～』を見つけたので、なんとなくダウンロードした。
なんとなくダウンロードして、なんとなく遊んでいたら、いつの間にかLv100まで進行していたので、遊んでいて感じたことを書いてみる。
『どこでもいっしょ』は姉が遊んでいるのを見たことはあるけど、トロの名前と簡単なゲームシステムしかわかってない。言葉を教えて、変な話をしているのを眺めるだけだと思っていた。その認識は間違いじゃない。トロは変な言葉の使い方をするし、あべこべな会話ばかりする。
機能的に考えれば、学習型AIのはしりみたいなものかもしれない。主人公はそんなトロやポケピたちと触れ合いながら、温泉街を発展させていく――というのが基本の流れ。
キャラのレベルアップとか、武器防具とか、そういう概念は基本的に存在しない。パズルをクリアしたら星（観光大使の証）を獲得して、星を消費してストーリーを読み、またパズルをしていく……めちゃくちゃ単純なので、一見すぐに飽きそう。
でもLv100までプレイしてしまった。今も特にやめようとは思っていない。なぜだろう？ Steamには積みゲーが残っているし、『アナザーエデン』は第2部中編の途中までしか進めていない。やり残しのゲームなんていくらでもあるのに『トロとパズル』で一心不乱に遊んでしまうのはなぜか。考えてみたときに感じたのは、驚くほど単純で、だけど在るべき姿の「ゲーム性」だった。
ゲーム性とは
具体的に定義された言葉ではない。Weblioはこう記している。
ゲームの「ゲームらしさ」を指すような意味合いで多分に曖昧に用いられる表現。ゲームの醍醐味といえるルールややりがいを感じさせる要素を指して用いられることが比較的多い。
ゲームらしさとは何か。 考え方は千差万別だけど、僕は「課題に対して自分の意志で挑戦して報酬を得られる」ことだと定義する。ゲームは能動的な娯楽のひとつだ。自分の行動の結果でストーリーが進行し、成功失敗が決まる。キャラクターの生死が左右されることだってある。
与えられる課題に挑戦し、クリアすれば報酬がもらえる。報酬をもとに自身をパワーアップし、 さらに困難な課題に挑戦する。これがゲーム性だと思う。PDCAサイクルではないけど、課題→挑戦→報酬のサイクルはあらゆるゲームにおいて通用しうるシステムだろう。
さて『トロとパズル』。課題はパズルで、パズルに挑戦すれば観光大使の証がもらえて、トロとお話ができ、ストーリーを読める。僕の考えるゲーム性を超ストレートに体現しているんだから、ハマらないわけがなかった。本当に単純なゲームだけど、課題→挑戦→報酬は確かに存在している。パズルをクリアすればシナリオが進み、街がどんどん発展していく。
これ以外の遊び方は、正直トロに言葉を教えるくらいしかないかもしれない。だけどそれ自体もスマートフォンのなかに新しい友達ができたような感覚で、いつまでも眺めていられる（これは単に僕に友達がいないからかもしれない。南無）。
自分の趣味に染めあげるか、ディストピアな単語を仕込むか、すべて自由だ。言葉を教えるのも任意のタイミングで自由にできるからストレスも溜まらない。
基本はパズルで頭を使って、クリアできればご褒美として温かみに溢れたストーリーを読める。空き時間にはトロに言葉を教えて、主人公のことが大好きな相棒とのひとときを過ごす……。再三言うけど『トロとパズル～どこでもいっしょ』は本当にシンプルなゲームで、 しかし“ゲーム性”を忠実に体現しているとても優秀なゲームだ。
いつか飽きて、やめてしまうこともあるかもしれない。それでも『トロとパズル』はゲーム性とは何か、ということを再認識させてくれて、ささやかな課題達成と実現できて、日常生活に優しい風を吹き込んでくれるコンテンツだ。もちろん僕にとっての話だけど、該当するのは僕だけじゃないだろう。
最後にトロから雑学をひとつ。
勉強になる。
